2006年夏、歩き遍路の旅に出ました。歩き遍路を計画中の皆さん、是非参考にしてください。 下記ボタンをクリックすると個別の日記がご覧になれます。
阿波(徳島) 発心の道場23ヶ寺
お遍路初日『出発・準備編』
今日は朝五時に起床。
3時間半しか寝ていない。
寝呆けながらも出発の準備をする。
両親からおにぎりを渡されわかれを告げた。
家を出た後、忘れ物はないか、また気になった。
だいじょうぶ!・・・だと思う。
ボウズ頭で電車に乗るのは気恥ずかしかったが、
だれも自分のことなんか見てやしない。
自意識過剰。
大阪駅からバスで徳島へ。
昨日睡眠不足のため、バスの中で寝ようと思ったが、後ろの座席の外国人が二時間しゃべり続け、気になり眠れず不安なスタートとなってしまった。
睡眠とりたかったなぁ・・・。
高速鳴門で降り、徒歩でJR鳴門駅へ。
そこからお遍路出発地点の最寄駅で降車し、一番札所「霊山寺」をめざす。
まず道具を揃えるため、霊山寺の隣にある「門前一番街」におもむく
「一番街」というくらいだから、上野のアメ横みたいなものをイメージしていたが、
ただのお土産屋さんだった。ガックリ・・・。
店員さんが丁寧に説明してくれた。
白衣1800円、手ぬぐい200円、お札400円(100枚)、金剛杖1000円、管笠1600円、経本300円、納経帳1500円、合計6800円のお買物。
なぜこの布切れが1800円?棒きれが1000?という気持ちを抑えつつ・・・。
道具を揃えているときに『ドラクエ』を思い出した。
ドラクエの主人公は、旅にでる前、王さまから渡された金で戦うための武器やアイテムを買う。
さしずめ、白衣は「ぬののふく」、金剛杖は「ひのきのぼう」か・・・。
銅のつるぎが欲しいなぁ、と馬鹿なことを考えつつ、すべてのアイテムを実際に装着してみる。
かなりお遍路さんらしくなった、と我ながら満足、満足♪
しかし大変なのはこれからだった。
「お参り編」へつづく。
お遍路初日『お参り編』
いざお参りするとなると大変だった。
すべてに順序があるからである。
それに従わないと縁起が悪いことになることもあるらしい。
几帳面な僕はそれをマニュアルどおりにこなすことに全力を注ぐ。
そんなことを気にしていると、本堂に金剛杖を置き忘れちゃったり、
てんやわんやでかなりテンパった。
ガイドのおばあちゃんがいろいろ教えてくれた。
般若心経を一緒に声を合わせて読んだ。
まるでホントの祖母と孫のように。
おばあちゃん、ありがとう!
霊山寺には11時前には着いていたのだが、こんなことをやっているうちに一時間もタイムロスしてしまった。
そして、二番札所ヘ向け歩き始めた。
今日は15km先の六番札所「安楽寺」に宿泊の手配をしている。
このままちんたらやっていると到底着くことはできない。
自然と歩くスピードがあがる。
しかし今日はとにかく暑い!!
1キロ歩いただけで汗が滝のように出る。
熱中症になってもおかしくない灼熱地獄だ。
二番札所「極楽寺」に着き境内に入ったら誰もいなかった。
オフシーズンなんだね・・・。まぁ、こんな暑い中歩く人もどうかしてる。
そこで僕は決定的な失敗をしたことに気付く。
「ライターを買っていない!」
このままではローソクと線香に火を灯すことができない!
後からやってきたおじさんに「ライターを貸してください」とお願いし、
事無きをえた。
その後、境内で写真を撮っていると、そのおじさんがなんとライターをくれた。
「これがお接待というやつか・・・。」
と、初めてのお接待に嬉しさと、安心感を得た。
おじさん、ありがとう!
さて、三番札所で出会ったおじさんは高知で無料接待する宿を経営(?)しているらしい。
その場所は37番くらいなので、ずいぶん先だが必ず伺います!
おじさん、ありがとう!
歩くリズムをつかんだ僕はどんどんお参りをこなしていく。
五番札所では、
「夏に歩き遍路をやる人は修業をやりたい人しか来ないよ」
と言われ、
「・・・。そんなにキツイの?」
と思う反面、
「やってやる!見てろ!」という気持ちが出てくる。
そんなこんなで目標地点『安楽寺』に無事17時半に到着。
宿坊の部屋が個室でクーラーも付いているのに驚き!
料理も美味しいし、風呂も温泉!
ただ宿泊している人が四人と少なかったので寺の夜のお勤めは中止に・・・。
残念。
明日も早いのでねなくちゃ。
本日のお参り:一番札所〜五番札所
霊山寺、極楽寺、金泉寺、大日寺、地蔵寺
歩いた距離:16km
お遍路二日目『とにかく暑い!』
今日は朝六時起床。睡眠不足はまだ解消していない。
七時からお参り開始なので、七時前に宿坊を出た。
泊まっていた他の三人のうち二人はすでに出発していた。
僕も負けてられないぞ。絶対に追い付いてやる。
朝一で安楽寺をお参りした後、歩き始めた。
朝は涼しくていいなぁ、と思ったのは一瞬だった。
八時から日照がきつく、早くも汗だくだくに・・・。
七番札所十楽寺をお参りし、八番札所熊谷寺に向かうところで右足に違和感が・・・。
なんとかだいじょうぶそうだ。
俺の強靱な右足がこんなところでどうにかなるものか。
八番札所で、H君と出会った。東京出身の29歳。会社を辞めてきたらしい。
一緒の境遇に親近感がわく。
今夜泊まるところが同じなのでまた会うことになるだろう。
H君を追い抜き、九番札所法輪寺へ。
地図に詳しい情報がなく、ちょっと迷ったが絶妙の方向感覚でなんとかリカバリー。
本道に戻れた。
しかし、この辺は田んぼばっかりだなぁ。
そろそろ暑さに参ってきた。
安楽寺に泊まっていたH沢君になんとか追い付きたいが、
歩けど歩けど姿が見えない。
彼は27歳。若いっていいなぁ。
九番札所法輪寺に着くやいなや、世話好きなおじさんが出現!
「そのバッグは横につけたほうが歩きやすいけん、オレが結んでやる!」
「は、はぁ・・・。」と戸惑いつつやってもらった。
「どや!歩きやすいやろ!」と言われ
「は・・、はい」と答えるしかないやんけ!
有り難く好意を受け取っておきます。
ありがとう・・・おじさん。
九番札所を出発し、十番札所切幡寺へ。
民家が立ち並ぶ道を歩いていると、そこで思いがけないものに出会う。
無人接待所である。
冷たい麦茶と水が置かれていた。ホントにありがたいことだと、三杯もご馳走になる。
生き返った!
十番札所切幡寺の入り口に着くと、そこからものすごい登り階段!
333段もある!ヒェー!
なんとか登り切ったところに歩き遍路の姿が。
大学生のK君。彼は「人の夢」を集めて回っているらしい。
最終的にはそれを富士山の火口に撒くのだそうだ。
僕も夢を書かせてもらった。それが叶うといいな。
切幡寺で40分ほど休む。
次は10KMの道程なので充電。
K君は先に発ち、それを追いかける形で、十一番札所藤井寺を目指す。
道中、吉野川を渡る。
後で聞いたのだが、自分が歩いてきた遍路道は、
台風のときのように水量が多くなると沈んでしまうらしい。
藤井寺をお参りし、鴨の湯へ。
着くとH君とK君が先に着いていた。
温泉に入り、体を休める。
遅れて、H沢君が到着。
先に行っていた彼がどうして?
「道に迷いましたぁ・・・。」
こういうことにならないように気をつけなくっちゃ。さて、明日も早い。がんばるぞ!
お参り:第六番札所〜第十一番札所
安楽寺、十楽寺、熊谷寺、法輪寺、切幡寺、藤井寺
歩いた距離:23km
お遍路三日目『地獄の難所!焼山寺!!』
前日の夜は暑いし、半分外で寝ているような状態でよく眠れなかった。
他のメンバーも同じようで朝四時くらいには起きていた。
睡眠不足のまま、五時すぎに鴨の湯を出発。
メンバーでは一番早かった。
五時半に、十二番札所焼山寺の入り口に到着。登山開始。
さすがに最大の難所と言われるだけのことはある。急坂が続く。
朝方はまだ体力があるので、スイスイ登れた。
どうも、山に入ったのは自分が一番乗りらしい。
何でも一番ていうのは気持ちがいいもんだ。
登山道にはところどころクモの巣が張られているので
誰も通っていないということがわかる。
金剛杖で払いながら進む。
山道は別世界に来たような荘厳な雰囲気があった。
お大師様(空海)は何を思ってここの道を歩いたのだろうか?
それと「何故、山の上で修行をする必要があるのか」と、
登り坂に苦しんでいた僕は正直それをうらめしく思った。
それほどに厳しい登りなんです!
水分補給しながら進むも水がなくなり、
道中のチェックポイントである柳水庵で湧き水をペットボトルに補給。
焼山寺までの中間地点なので奮起する。
ここから先は、水補給できる場所が焼山寺までないらしい。
実はそこから先が、まさに地獄だったのである。
標高938M。僕は重い荷物を持ちながらの登山は初めてだった。
登れど登れど急坂が続く。
たまらず脇道に座り込み、上方を見上げるが頂上は見えない。
でも坂道は続いているようだ。
「いったい、いつまで続くんだ?」
僕の体力が消耗していく。
睡眠不足がたたったのか?
すでに登り始めてから三時間がすぎようとしていたその時、後方から人影が・・・。
埼玉在住のSさんだった。
スイスイ登るその姿をみて、「早いですね!いつごろ出発したんですか?」
「六時四十分くらいかなぁ・・。」
「えぇー!!」
自分より一時間以上遅れて出発したのに、もう追い付いたの?
この人の脚はハンパじゃねぇ・・・。
楽々と追い抜いていったSさんはロードバイクで体を鍛えており、
登り坂が好きだということだ。
自分も負けてられないぞ・・・、と発奮するも、
もう僕の体力はすでに限界を超えているのは明白だった。
そして、何とか焼山寺にたどりついた!
ヘトヘトになりながら境内へ。
Sさんが座っていた。彼は3時間10分でフィニッシュ。
僕は4時間40分かかった。
健脚五時間、並脚六時間と言われているので自分も捨てたもんじゃない。
お参り後、休憩しているとおばあちゃんが近づいてきて、
野口英世を一枚お接待してくれた。
ホント申し訳ないですが、有り難くいただいておきます。
おばあちゃん、ありがとう!
その後、Sさんより先に焼山寺を出発した僕は、今日中に十三番札所大日寺まで着きたいと考えていた。
だが、それは無謀だった。
そこからまた山道が始まったのである。
道中、「これは無理だな・・・。」と思い、宿をどうしようか悩んでいたところ、
前方にSさんの姿が・・・。
何故?
どうやら自分が道を間違えたときに、追い抜かれたみたいだ。
今日はSさんと同じ宿に泊まることにした。
ホントに助かりました。
人のご縁や出会いというのは何が起こるかわかんないもんですね。
お参り:十二番札所焼山寺
歩いた距離:25km
歩行時間:9時間30分
お遍路四日目『徳島ラーメンを求めて』
昨日の夕食でご飯を三杯おかわりして、九時間睡眠をとった。
気持ちのいい朝だった。
朝食もご飯をおかわりし、体力が完全に回復した。
Sさんと一緒に出発したが、やっぱり歩くスピードが違うのですぐ姿が見えなくなった。
朝早く涼しかったので、やっと周りの風景を見れる余裕がでてきた。
十三番札所の2km手前に風力発電している、おへんろ休憩所を発見!
立ち寄るとSさんの姿が。
「やぁ、早かったね。」と笑顔。
自分は苦しんでいるのに、彼は楽しんでいるなぁ・・・。
水とアメを補給させて頂き、Sさんから遅れて15分後に出発。
やっと、十三番札所大日寺に到着。
休憩無しですぐに発つ。
ここから十四番札所から十七番札所までは、10km以内に点在しているので楽。
川を渡って木立を抜けて、十四番札所常楽寺、十五番札所国分寺をお参り。
歩いて札所をチェックポイントみたいにお参りすることが目的のようになってしまっている。
本来の目的は違うハズだ。
とは思うものの、厳しい暑さに何も考えられなくなってしまう。
自分の事を歩きながら考えるにはもう少し時間が必要なようだ。
十六番札所:観音寺に向かう途中、無料おへんろ休憩所を発見!
うどん屋さんが隣接しているので、かけうどんを注文。(写真)
コシがあって旨い!
無農薬の米を使用し、添加物を一切使用していないそうです。
値段も200円と安く、オススメ!
名前を忘れてしまいました。
192号線を歩けばすぐにわかります。
十六番札所付近で道に迷う。
徳島市内は歩き遍路に優しくない町。
いままであんなにたくさんあった行先表示板が極端に少ないんです。
なんとかリカバリーした僕は、十七番札所:井戸寺に向かう。
結構、都市部に入ってきているので、世俗の人(一般人のこと)と出会うことが多い。
この僕の完全なおへんろスタイルを奇異な目で見る人も・・・。
そんな目で僕を見ないで!
十七番札所に到着したら、Sさんの姿が。
「十六番札所付近で迷っちゃったよ・・・。」
やっぱりね。
かなり先行していたのに、相当タイムロスしているようだ。
一回道を間違えると、もと来たみちを戻らなければならないなので、かなり時間も体力もロスする。
Sさんは先に発つ。これ以降会うことはなかった。
十七番札所をお参り後、本日泊まる宿を予約。
素泊まり3000円。安っ!
徳島市内中心部を目指し、再び歩き始める。
その途中に「徳島ラーメン」の美味しい店「春陽軒」があるとの情報を僕はキャッチしていた。
不思議と脚が軽くなった。
楽しみだなぁ♪と思っていたら、なんと「本日休業」の看板が!
おかしいな、今日は定休日じゃないぞ。
そこに但し書きが!
「売り切れ次第、閉店します。」
・・・。なるほど、人気なんだね。残念。
途中、通りがかりのおじさんにお接待で100円もらう。
ありがとう!おじさん!
その後、民宿に到着。休養。
洗濯を終わらせてから、自転車を借りて徳島市内を走る。
飯を食いたいが、ファーストフードしかない。
やっと見つけた「徳島ラーメン」。
人気店のようだが・・・。
徳島ラーメンとは、一言で言うと「肉そば」。
言うほど旨くはなかったなぁ。
飯のあとは、おへんろさんは無料で入れる温泉「新町温泉」でゆっくり。
体の細胞が蘇っていくようだ。
いい湯でした。ありがとうございます。
明日は台風が近づいているとのウワサ。
大丈夫かな?
やっとポンチョの出番かなぁ。
お参り:第十三番札所〜第十七番札所
大日寺、常楽寺、国分寺、観音寺、井戸寺
歩いた距離:25km
歩いた時間:9時間
体重:75kg(‐3kg)
お遍路五日目『決意の朝に台風接近!』
「ジリリリリ・・・!!!」
早朝、大音量で部屋の電話が鳴った。
何事かと思い、電話に出たら民宿のおばあちゃんだった。
「おむすびを作ったから持って行きなさい」
ホントにありがとうございます。
3000円しか払っていない僕は、このお接待に目頭が熱くなった。
おばあちゃん、いつまでもお元気で!
朝七時前に民宿を出発した僕は、台風の動向が気になっていた。
朝イチの情報では四国直撃とのこと。
できるだけ晴れているうちに歩かなきゃと、ハイテンポで歩く。
台風の影響か、風があり比較的涼しかったため、快適に歩けた。
一日に歩く距離が伸びないのは、間違いなく暑さのせいだ。
十八番札所:恩山寺に到着。
納経所に行くと、おばちゃんが「台風それたみたいよ。四国には来ぇへんで」
と、最新情報を教えてくれた。
『よかったあ・・・』と胸をなでおろす。
しかし、台風がそれたおかげで、またカンカン照りに。
困ったもんです。
ちょっとくらい雨が降らないかなぁ、と都合のいい事を考える。
しょうがないね。台風よりマシか。痛し痒し。
十九番札所:立江寺までは4km。
立江寺手前で妙な人と会う。 見た目は40代の男。
おへんろさんのようだが、頭にパンダの着ぐるみをつけているのだ。
なんでも全国を着ぐるみで行脚しているらしい。
その行為に何か意味があるのだろうか。
立江寺をお参り後、納経所に行くと、応対してくれたお坊さんの対応が事務的。
しかも、終わったらすぐにケータイをいじってた。
あなたも、もう少し精進が必要だと思うので、歩き遍路をやったらどうですか?
イカン・・・、十善戒の一つに「不悪口(悪口を言わない)」があったな。 前言撤回。
立江寺を昼前に出発し、次の鶴林寺は山越えになる。
しかも山中には泊まれるところがない。
そのため、今日は鶴林寺の山の麓に泊まることにした。
距離が伸びないが、仕方がないね。
僕が民宿でもらった資料には
「一日に歩く距離は個人差があり、千差万別ですが、目的の宿までが一日の歩く距離となります。
ある意味で宿探しの日程にならざるを得ません。」
とかかれていた。
目的の宿を目指し、歩いていると、前方からおへんろさんが・・・。
その人は40代くらい。
話し掛けると、その人は一日100円生活、完全野宿で逆打ち(おへんろを反時計周りで回ること。)しているらしい。
「この人はおへんろが目的になってしまっている人だな」と直感した。
宿に2時半に到着し、宿のおばあちゃんに話し掛けると、
「時間があるので荷物をここに置いて、鶴林寺をお参りしたらどうですか?」
あぁ、そういう方法があったか!
鶴林寺までは3kmだし、山だから荷物なしで登れるのは魅力だよね。
出発し、登りはじめると体に羽が生えたように軽い。
山道をスイスイ登れた。
いかに背中の荷物が負担であるかがわかる。
この調子で鶴林寺をお参りし、民宿に戻るために下っていたら、あのパンダ頭の人が出現!
山道なのでクマかと思ってビビったよ、まったく(汗)
だから、あなたは誰にアピールしてるんですか・・・?
明日は山越え!早く寝よう。
お参り:第十八番札所〜第二十番札所
恩山寺、立江寺、鶴林寺
歩いた距離:29km
歩いた時間:10時間
体重:75kg(±0)
お遍路六日目『決戦!太龍寺!!』
今日の朝はゆっくり起床。
今日は最後の難関「太龍寺」を越えなければらないからだ。
お遍路の難所を表す「一に焼山、二にお鶴、三に太龍寺」
という言葉があるそうだ。
一に焼山寺、二に鶴林寺、三に太龍寺というわけだ。
一と二をなんとかクリアし、残るは太龍寺。やってやる!
出発後、早速道を間違えたがなんとか引き返してグングン進む。
今日は調子がいいぞ。
そして、太龍寺の麓に到着。
そこには雄大な川が流れていた。
心が洗われるようなキレイな景色!(写真)
橋の上から撮影したのだが、その橋は以前は無く、渡し舟で向こう岸に渡っていたそうな。
登りはじめると、渓流沿いに登っていく遊歩道に出た。
休憩無しで歩き続けていた僕は、そこで一旦休憩することにした。
渓流に下り、川の水で顔を洗う。
「冷てぇー!」
とても気持ちがいい。
しばらく渓流の岩の上に座っていた。
登って来る人は誰もいない。
目を閉じると、川のせせらぎだけが聞こえ、渓流の上方から涼しい風が頬にあたっているのがわかる。
時間が止まっているようだった。
僕にとってお遍路はタイムトライアルではなく、こういう時間が必要なのだ。
無心とまではいかないが、心が穏やかになっていくのが心地よかった。
再度登り始めると、また地獄のような坂が始まった!
一度に登り切る体力は僕にはなく、山の中腹でゼェゼェ言いながら座り込んだ。
「辛い」
ふと頭をよぎったのは映画「ブレイブストーリー」のCM。
『辛い時、辛いと言えたらいいのになぁー、あーあぁ♪』というフレーズ。
・・・。もうすでにオレは何回も言ってるよ。
そういうアホなツッコミを入れながら再度歩きだす。
さすがに最後の関門。
そう簡単には行かせてくれない。
なんとか登り切った僕は、太龍寺の境内でへばっていた。
でも、もうこんなキツイ登りがしばらくないと思うと嬉しかった。
ホントに登りは苦手。
昨日、Sさんと話したとき
「君とオレだと体重が15kgもオレの方が軽いんだから、オレの方が登りは早くて当たり前だよ」と言ってた。
なるほど、理にかなってるね。
もっと痩せれば登りが楽になるのかなぁ?
太龍寺をお参りし、出発。
次は二十二番札所:平等寺まで22km。
今度は下りが殆どだから楽だった。
平等寺の隣の宿を予約していた。
3時過ぎに到着し、平等寺をお参り。
宿に戻り、体を休める。
宿の名前は「山茶花(さざんか)」。
そう、「さざんかの宿」ということになる。
BY 大川栄策
明日は二十三番札所:薬王寺までお参りの予定。
そこで徳島でのお参りは終了。
次は高知へ突入します。
徳島は「発心の道場」と言われています。
「発心」とは、思い立つことの意。
次の高知は「修業の道場」。
仏道を身につけ、精神性を高める道場らしい。
お参り:第二十一番札所〜二十二番札所
太龍寺、平等寺
歩いた距離:26km
歩いた時間:7時間半
四国番外TOPICS『カニに注意!』
おもしろい看板を見つけました。
『カニに注意』
アカテガニ横断に注意、ということらしい。
びっくりした。カニが襲ってくるのかと思った(笑)
歩いてると確かに道路の上にカニがいるのを見つけました。
でも、小さいので車で通行する人は気をつけようがありません。
なんとかこの小さな命を救ってあげられるいい方法はないもんですかね。
徳島県日和佐町付近で撮影
お遍路七日目『終わりなき室戸への旅』
昨日夜、辺りが暗くなった七時半頃、「遅くなりましたぁ〜!」と申し訳なさそうに、
親子のおへんろさんが宿に飛び込んできた。
無理な計画を立て、山の中で日没を迎えてしまい、
なんとか県道に出てタクシーを呼んだのだそうだ。
こんな風にならないように、「無理の無いおへんろプラン」を立てなければ・・・。
「さざんかの宿」の夕食と朝食は、ライスがてんこもり!
おばちゃんが「ご飯おかわり、いいか?」としきりに聞いてくる。
「イヤ・・・、もうお腹一杯です」
お気遣いありがとうございます。
今日は無料宿に泊まる都合で、距離が短い。
8時前と遅目の出発をした僕は、また歩き始める。
早速汗が吹き出す。
今日も暑いなぁ、チクショー。
昨日、さざんかに着いた時、喉がカラカラでピッチャーで出てきた水をガブ飲みし、飲み干した。
人間の体は、70%が水だといわれているが、
その時に限っては僕の体は、80%くらいは水だったのではないだろうか?
でも、また歩くとそれが噴き出て70%に戻りますけどね・・・。
今日は山道ではなく、大きな国道55号線を歩く。
そこには「室戸まで96km」と書かれた看板があり、それを見てボーゼン・・・。
室戸には、第二十四番札所があるんです。
気が遠くなった。
国道沿いには、トンネルが何か所かあった。
歩きでトンネルの中を歩くなんて初めてだよ。
車が通るたびに轟音が鳴り響く。
車がいなくなると、僕の持っている金剛杖の「カツーン、カツーン」という音が響き、何か心地よかった。
でも、この中空気汚いんだろうなぁ・・・。
国道から外れ、海岸沿いにを歩き始めると、極端に車が少なくなる。
やっぱりこっちのほうがいいね。
途中、海水浴場にさしかかりサーファーの人たちから奇異な目で見られる。
またかよ・・・、そんなに僕の格好はめずらしいんですかね・・・。
てくてく歩いていると、集落を通りがかった。
そこで、おばあちゃんにお接待を受ける。
出てきたのは「アサヒスーパードライ」
「イヤ・・・、僕はアルコールは弱いので」と丁重にお断わりする。
代わりにアイスコーヒーとみかん二個、饅頭一個もらう。
出掛けに冷えた水を手渡してくれた。
おばあちゃん、ホントにありがとう!
みかんを昼食代わりにして、再び歩く。
途中、看板を無視し道に迷う。自分の直感はアテにならないと再認識。
やっと、第二十三番札所:薬王寺に到着。
お参り。やっと、般若心経(お経)も板についてきた。
段取りよく、納経をすましたら、14時だった。
時間的にちょっと早いが、宿へ迎う。
「ドライブインはしもと」で無料で泊まらせてもらうのだ。
バスを改造した宿は有名で夕飯もタダでごちそうになれるらしい。
地図の通り伺うと店員の方が
「バスの場所はここから1.4km離れています・・・。」
と申し訳なさそうに。
・・・、また修業だね。
近くの「ホテル千羽」で温泉日帰り入浴。掛け流しで最高!しかも貸し切り状態!
体力が完全に回復した。
そして、無料宿(バス)へ。
バスのなかにはテレビ、扇風機、電灯もついている。
なかなかのもんだなぁ、と思って見ていると、店主の橋本さんが夕食を持って登場。
夕食を見て驚く。
スゴイ量だし、おかずが五品も!
橋本さん、ゴチになります!
ただ、このバスの難点は窓に網戸がないことだね。
ま、仕方ないか。
お参り:第二十三番札所:薬王寺
歩いた距離:21km
歩いた時間:6時間
四国番外TOPICS『遅い車は・・・』
おもしろ看板その2
『遅い車は左へ寄ってくれるけ』
なーんか、ほのぼのするなぁ。 徳島県日和佐町付近で撮影。 ちなみにこの写真は、須藤元気 著『幸福論』にも掲載されています。
そうかぁ、ここにあったんだ。
お遍路八日目『歩行距離、未体験ゾーンへ』
今日は、最長歩行記録を達成!なんと38km!
とことん歩いたなぁ・・・。
今日は、徳島は快晴。
炎天下のなか、よくがんばった。と、自分を誉める。
実は、昨日の無料宿(バス)ではよく眠れませんでした。
カサカサと、何か虫がどこかで蠢いている音が気になってしょうがなかった。
(たぶんゴキブリさんでしょう)
あまり、管理もされていないので仕方ないね。
朝5時に出発。
やはり、朝方は涼しい。
ローソンでおにぎりを買い込み、歩き始める。
今日は涼しいうちに行けるところまで行って、暑くなったら昼寝して、休憩する作戦。
快調に飛ばしていると、掃除しているおばあちゃんから100円のお接待。
ありがとう、おばあちゃん!
今日は道に迷うこともない。
地図を見る必要もない。
なぜなら、国道55号線をただ南下するだけだからだ。
風景はつまらないし、車は排気ガスを吐き出して、ビュンビュン走ってる。
これじゃ、都内を歩いているのと変わらないなぁ・・・。
次のお寺まではその道しかないので、そこを行くしかないんです。
修業の一日だった。
歩く。
歩く。
歩く。
歩く。
休憩する。
歩く。
歩く。
歩く。
休憩する。
・・・・・・・。
ひたすらこれの繰り返し。
人に会わないというのも、精神的にキツかった。
まさに、自分との戦い。
「何を考えて歩いていたのか?」
無心ではない。
様々なことを考えるのだが、同じ事を考えるにしても、家のなかで悶々と考えているよりは何か閃きそうな予感はある。
フィジカル面、メンタル面の両方を強化しているという感じかな。
昼過ぎにさしかかると、睡眠不足、疲労、酷暑などの要因により、歩くスピードが落ちてきた。
本日泊まる宿までの距離が、道の看板に表示される。
あと、5kmとなってから自分の中でカウントダウンが始まった。
それほどに疲れていたのだろう。
あと、2km・・・。 もう僕は競馬で言うと「逃げ馬」のような状態だった。
4コーナー廻ったところで、もう脚が残っていない。
いくらムチを入れても前に進む力がない。バタバタ。
最後は歩くようにしてゴールする逃げ馬。
今の自分にピッタリ。
宿まで長いなぁ・・・、と思っていると、前方にSさんの姿が! 2日ぶりの再会。
彼は歩くスピードが早く、時間が余っているので、近くの温泉で汗を流していたとのこと。
まさに、「ウサギと亀」状態!
「そうか・・・、オレは亀か・・・」
と考えると何だかガックリ。
Sさんは、もう少し先の町で宿泊するとのことで別れる。
宿までもう少しというところで、雷雲発生!!
雨がポツポツ降りだした。
濡れるのがイヤな逃げ馬の脚が突然甦り、高速スピードでフィニッシュ。
やればできるもんですね。
振り返ると、一日に歩く距離は40kmが限界だと思う。
それほどにキツい。
でも、マラソンランナーはそれを2時間で走るんだからスゴイもんです。
荷物は持ってないけど。
明日もロングウォーク。
この風景のつまらない55号線を早く脱出したい。
お参り:なし
歩いた距離:38km
歩いた時間:9時間半